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「表現者」としての勝利 2022.2.15

連日、北京五輪の熱戦が続いているが、皆さんはどんな競技に注目しているだろうか。今大会は、競技外の事で何かとニュースになることが多く、選手たちの活躍が霞んでしまっているようにも思えるが、その中でもひと際注目されているのは、やはりフィギュアスケート男子の羽生結弦選手だろう。スポーツには興味がない、実は今回の五輪もあまり見ていないという人も、この人は頭に思い浮かんだのではないだろうか。羽生選手は、今大会、前人未到の4回転アクセルに挑む事で早い段階から注目を浴びていた。

「4回転って皆飛んでるじゃん」

うちの母親が、羽生選手の演技を待つまでの選手の演技の最中こう言った。なので少しばかり調べてみた。フィギュアスケートのジャンプには、「トゥループ」「サルコウ」「ループ」「フリップ」「ルッツ」「アクセル」という種類がある。これはテレビで解説者が口にする事もあり、私も知っていた。具体的に何が違うかというのは知らなかったのだが、どうも踏切足と、もう片方の足の挙動(振り上げる、トゥ(つま先)を突き立てる)の違いらしい。だが、アクセルだけは、その他の技と大きく違うところがあるとの事。

他のジャンプでは後ろ向きにジャンプの姿勢に入る。だが、アクセルだけは、前からジャンプに入る。「本当かな?」と思い、4回転アクセルのシーンを見返すと確かに、ジャンプ姿勢に入るまでは後ろ向きなのだが、踏切の際、前を向いていた。

母が「4回転飛んでるじゃん」と言ったのは要するに、後ろ向きに踏み切る他のジャンプの事で、前向きに踏み切るアクセルだけは難易度が段違いで誰もまだ飛べないという事なのだと考えられる。

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そんな素人目には「今までに前向きに4回転飛べた人がいない」の事としか言えないのだが、とてつもなく難しい挑戦をした羽生選手。

結果として、失敗とはなったが、公式大会で初めて4回転アクセルが認定された。その後のインタビューで4回転アクセルの失敗について聞かれた時の言葉がとても印象に残っている。

「それと、あともちろんミスをしないって言うことは大切だと思いますし、そうしないと勝てないのはわかるんですけど......。でもある意味、あの前半の2つのミスがあってこそ『天と地と』(注:フリーの使用曲)の物語が出来上がっていたのかなって言う気もします」

「羽生くん声が震えてる」「泣いてもいいんだよ」 4位羽生結弦、試合後インタビューに感動広がる(J-CASTニュース) - Yahoo!ニュース

羽生は、ショートプログラムにおいても、ジャンプの際、他の選手がジャンプの際に作った穴にハマり、技のグレードを下げる事になっていた。その結果、メダル圏内には程遠い8位でショートを終えていた。彼の言うミスはこれと4回転アクセルの2つ。この言葉が何故、印象に残っているのかというと、彼はミスも含めて自分の「世界」を表現できたのではと答えたからだ。

メディアや国民は皆、レベルの高い4回転アクセルが成功するかに注目していた。そして彼に対する「彼なら今回もメダルを取るはず」というプレッシャーも、とてつもなかったはずだ。だが、4回転アクセルが決まらなかった直後、メダルが取れず4位で終えた後、彼が口にしたのは、フリーで使用した『天と地と』の世界観を表現できたのではないかという、技の成功失敗や勝ち負けやメダルの有無ではない「表現者」としての言葉だった。

大会中、競技を一緒に観る事が多い母はよくこう言う。

「ジャンプとかより技があるスノーボードやスケートの方が好き」

まぁこれは人の好みであるし、ましてやジャンプなどの競技を蔑ろにする訳でもない。その前提で、スケートなどの競技は、勝ち負けの前に「表現」としての側面がある。そのクオリティの高さ、世界観、表現力が、点数になり、勝ち負けがつく。そして、メダルが決まる。

だが、その勝ち負けと「表現」は、真逆の位置にある。絶対的に価値を決めるものでありながら、己の表現したい、そして見る人に伝えたいものを追求しなければいけない。今回だって、彼の言うように4回転アクセルに挑戦しなければ、勝てていたかもしれない。

でも、その中で、勝ち負け以前にある「表現」を大事にし、ミスをも作品の一部だとインタビューで答え、挑戦した彼は本当にすごいとそう思った。そして、勝ち負けでもメダルには届かなかったが、4位という追い上げ。すごすぎる。

私たちはつい、技がすごいとかメダルを取ったなどというところに目を向けてしまう。だが、羽生選手に限らず、スケート競技に挑む選手はあくまで自らの世界を表現するために、必要なジャンプに挑戦しているにすぎないのだとそう改めて思わされた。

だからスケートは「演技」と言うのだとも。

北京五輪は、まだまだ続いている。私は4年前の「そだねー」ブームからカーリング女子(ロコ・ソラーレ)を特に応援している。カーリングに関してはまだまだこれからで、連日白熱した戦いに、私も静かに白熱している。スキージャンプ混合団体では、高梨沙羅選手がスーツの規定違反で失格になった。「メダルのチャンスを奪った」「謝ってもメダルは返ってこないが、今後の競技に関して考えなければならない」そう語っている高梨。

スポーツに勝ち負けはつきもので、皆メダルを目指す。そして見ている人々はそれを熱望する。だが、それだけではないと私は思う。私はよく「音楽には力がある」と言うが、スポーツも同じく心を動かす力がある。直接、表現を競うスケートだけでなく、記録を競う、勝負を決める競技においても、その記録や勝利が全てではない。その競技に取り組む姿勢や真摯な思いにはメダル以上の価値があり、負けたから、メダルが取れなかったから「ダメだ」なんて事は絶対にない。そう思う。そう考えられるのがスポーツの良さなのではないかとも思う。

もっぱら文化系で、体育会系が少し苦手な私だが、少しばかりスポーツのすばらしさが分かった気がした。

 

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