『おかえりモネ』二人のヒーローが百音に教える「役に立つ」という事 2021.6.1
早くも2週目までを終えた連続テレビ小説『おかえりモネ』
”海” 宮城県気仙沼市の亀島で育った主人公、永浦百音(清原果耶)通称”モネ”が、”森” 宮城県登米市の森林組合で勤める中、様々な人々と触れ合いながら、”空”「天気予報士」という夢を見つけ、邁進する物語。
今週3週目からは、モネが祖母の初盆のため地元に戻り、百音の同級生も登場する。
「何もできなかった」と時折、後悔の思いを漏らす3年前の出来事にも近づいていく。
さて、先週2週目のタイトルは「いのちを守る仕事です」
2週目最後のモネが天気予報士の試験本を手に取るシーンで、たまたま開いたページに、書いてあったフレーズでもあり、2週目にモネが経験した出来事を表す言葉でもある。
2週目後半で、モネは地元の小学校の子供たちの山歩きと植林体験に付き添い、山に入るが、一人の男の子が山道を外れたため、モネは男の子と、後を追って下山することになる。だが、そんな最中、荒天に見舞われ身動きが取れなくなる。
どうしようもなくなったモネは、1週目に登米を訪れモネと面識のある気象予報士、朝岡に助言を求める。そして朝岡の天気予報に従い避難し、事なきを得たのだ。
「天気予報士」
1週目、モネは、森林セラピーのために山に入った時、朝岡が天気の変化をずばり言い当てた事に驚いた。
天気予報は、1時間のこと、さらに10分先の事なら正確に言い当てることが出来る。
私たちは当たり前のようにその天気予報と接しているが、よく考えると”魔法”のようにな不思議なものである。モネの驚いたあの顔が物語っている。
「未来が分かる」天気予報。
それを使う天気予報士は、魔法使いだ。
ここで、朝岡が、登米に来て訪れた「石ノ森章太郎ふるさと記念館」が思い出される。
石ノ森章太郎といえば、仮面ライダーやスーパー戦隊の生みの親として有名であろう。
仮面ライダーやスーパー戦隊、彼ら「ヒーロー」は人々を守るため、正義のために悪と戦う。
私は、仮面ライダーが好きで約10年前からリアルタイム視聴を欠かさない。そのため、”石ノ森章太郎”というワードが出てきて、ニヤッとした。
そして、それと同時に2週目の出来事と「ヒーロー」が結びついて想起された。
そう、天気予報士も「ヒーロー」なのではないか?と。
未来を予測する特別な力を用い、自然(災害)という相手と闘い、モネと男の子の命を救った朝岡はヒーローだ。
そう考えると、2週目のタイトル「いのちを守る仕事です」も、ばっちりマッチしている。人々の命を守る、それはまさに仮面ライダーやスーパー戦隊のようなヒーローの代名詞だからだ。
モネのピンチに駆けつけたヒーローはもう一人いた。
森林組合の横にある診療所に勤める医師、菅波だ。
菅波は、男の子が低体温症になってはいないかと、モネに電話をかけた。
その予測は当たっており、モネが急いで処置したことにより男の子は、無事に助かった。
朝岡と共に、菅波も「ヒーロー」だと言ったが、少しいじらしい人物だ。
森林組合に帰り、男の子の父親に感謝されたモネに、菅波は、
「駄目ですよ。真に受けちゃ。あなたのおかげで助かりましたっていうあの言葉は麻薬です」
と棘のある言葉を口にする。
確かに、モネ自身の力ではなく、二人のヒーローの助言のおかげだ。だが、モネ含め皆が助かってよかったと安堵していた際にその言葉は、少し場違いなのではないか。というかなんというかキツイ。
だが、そんな彼もただただいじわるで言ったようには思えない。その裏には「ヒーロー」なりの苦悩があるのではないか。
いじわるな人物というのは、あくまで表面上の印象だ。
そして命を守るヒーローというのも同じだ。
ヒーローは、人々の命を守る正義の味方。素晴らしい存在という部分しか見えないが、その裏には、様々な葛藤や苦しみがある。初代仮面ライダーが、敵の力を用い生まれた。正義とは矛盾した悪から生まれた存在であることもその一つだろう。
現在放送中の、仮面ライダーセイバーの主題歌にもこんな歌詞がある。
「仮面に隠れた涙を見せずに」
菅波のモネに対する発言は、そんなヒーローの苦悩や葛藤といった負の側面を表している。ただただいじらしいのではない。彼もモネ同様、悩んでいるのだろう。
朝岡は、菅波と違い、いつも笑顔で、いじらしいとは縁遠い「ヒーロー」の鏡のような存在だ。だが、そんな彼にも仮面の裏に隠れた苦悩がある。
朝岡は、モネの「予報が外れたら怖くないか」という質問に
「天気には絶対はない。だから怖い。」と答えた。
あっけらかんとモネのヒーローでいる朝岡も「ヒーロー」である故の苦悩を抱えている。
仮面ライダーは必ず悪の結社に勝利するが、現実では必ず勝利するわけではない。
だが、現実でも「ヒーロー」は絶対を求められる。
医者ならば天気予報士なら人を救える。
その存在そのものが希望なのだ。
それ故、その重圧と、責任は強大。
人の”役に立ち”、人の命を守る感謝される一方、人に大きな失望と絶望を与えることになるかもしれないという恐怖も抱えなくてはならない。
菅波の「真に受けるな」という発言は、そんな救えなかった時に抱える責任を知っているからだと思う。過去の自分をモネに重ねて、いじらしい発言をしてしまったのだろう。
モネが理想とする「人の役に立つ仕事がしたい」という先にある、そんな「ヒーロー」
このドラマはそんな二人のヒーローが、「人の役に立つ」ことは充実感だけではなく、苦悩や重圧、責任を伴うのだと教えてくれているのだ。
そして、ここでモネの世話をしているサヤカ(夏木マリ)の言葉もより腑に落ちる。
「死ぬまで、死んでからも役に立たなくてもいい」
「役に立つ仕事」をすることは、誰かのヒーローになる事でもある。
そしてそれには重圧や責任、苦悩が伴う。
だからこそ、無理に急いで役に立たなくてもいい。ただいるだけでもいいんだよ。
そういうサヤカの言葉が、モネに、そして視聴者に寄り添う。
サヤカの言葉がクッションになってくれるところがこのドラマの、良いバランス感であり心地よいところなのだ。
「おかえりモネ」はまだまだ始まったばかり今後に期待だ。
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